ARCHITECT COLUMN
埼玉県熊谷市Y様邸
ロケーションや暮らしを大切に、
要望を形にしたうえで、想像を超えること。
- 設計 fantastic design
- 施工 コスモ建設株式会社
- 所在地 埼玉県熊谷市
- 敷地面積 192.24㎡(58.14坪)
- 延床面積 117.99㎡(35.68坪)
- C値 0.4
- UA値 0.47
Feature.01
Locationまずは、土地のポテンシャルを最大限引き出すこと
家づくりで大切なことはたくさんありますが、まずは、その土地のポテンシャルをどう引き出すか。
敷地に対してのロケーションの活かし方は、大変重要です。
Yさんの敷地はとても広く、周辺環境もゆったりとしていておおらか。
そして、将来的にはすぐ目の前に公園もできる予定。こうした先のことまで意識して空間全体のゾーニングを考慮します。
豊かな景観を最大限活かすために、敷地の東側にテラスや庭を設け、LDKの大きな開口部もそちら側に向ける。
Yさんにも「ロケーションを気に入り購入した土地です。
この景観も最大限活用してほしい」という想いがありました。
そのご要望に応え、赤松氏も全体のゾーニングを熟考し、最終的には自然との調和を追求するプランが形成されました。
東側の庭面。撮影地点の背面側に、将来公園ができる予定
オーバーハングした2階の構造により、立体感のあるデザインに
Feature.02
Planning様々な暮らしのシーンを想定して空間のバランスをとる
土地の面積は広いので、いかようにもプランを組める半面、空間のバランスがポイントでした。
そのために軸にしたのが、やはり「東側の景色が見える構成」です。オープンキッチンで料理をしながら景色が眺められる。
ソファーでくつろいでいる時も、ふと目をやると豊かな緑に癒される、2階で起床後も自然を感じられる…。
そんな、この家でしか味わえない、当たり前だけど掛け替えのない毎日を過ごせる住空間を目指しました。
ソファーの配置を考えるときに意識しなくてはいけないのが、TVとの関係ですね。
ご家庭にもよりますし、TVの視聴スタイルも様々だと思いますが、そこに暮らしがある以上、当然実用性も意識しなくてはなりません。
ソファーの正面にTVがあり「姿勢を変えないと外の景色が見えない」というのはもったいない。
ソファーに座れば「窓の景色とTVの両方を姿勢を変えずに見ることができる」という配置にすることが多いです。
今回も様々な暮らしのシーンの目線と、暮らしやすさの観点を大切にプランニングを行いました。
楽しかった思い出話のように、家づくり当時の話題に盛り上がる
キッチンからの眺め。ソファーを挟んでその奥に、TVや景色が見える
Feature.03
Hearingたくさんの要望は、
暮らしを真剣に考えている証
Yさんご夫婦からいただいた要望書は、非常に具体的で実にたくさんの想いがしたためられていました。
言い替えると、暮らしについて、将来について、Yさんご夫婦はとても真剣に考えられている証だと思うんです。
私にとっても「想いにはしっかりと応えていきたい」と、設計への励みになります。
ご要望では、「玄関とLDKを完全にセパレートする」「畳コーナー(和室)が欲しい」「ランドリールームから外へ出られるようにしたい」…等々、具体的なものがたくさんありました。
ご要望は個別にとらえるのではなく、全体との繋がりを考えながらプランに落とし込んでいきます。
例えば畳スペースは、普段は日常の空間として活用しますが、ヨガのレッスンや来客時に開口部をすべて閉めると、LDKを通らず玄関から出入りできる独立したスペースになります。
また、1階テラスに干した洗濯物を取り込み、ランドリールームを抜けて、WICに収納するまでに至る流れなど、こうした機能的な家事動線も意識してご提案します。
写真のランドリー(脱衣室)は、勝手口から屋外に出ることもできる
和室はゲストルームにも。間口が玄関の仕切りとフラットになっている
Feature.04
Best Form 要望はすべて叶える、
そして、想像以上を創る
クリエイターの言葉に「要望はすべて叶える、そして、想像以上を創る」というものがあります。
とても意義深い言葉です。 プロとして、いかにご要望やご予算、デザイン、暮らしやすさなどのすべてを大切に考えるか。一つでも置き去りになってしまっては、良い設計とは言えません。
設計の時にいつも考えるのは、「私がこの家に住みたいかどうか」。
お客様の要望はもちろん踏まえたうえで、自分自身が快適に心地よく暮らせるかどうか。まず、自分の身体感覚を拠りどころにしながら、プランを練り上げていきます。
この積み重ねが、「要望はすべて叶える、そして、想像以上を創る」に繋がるのだと思います。
私たち建築家の間では、設計された間取りを見れば、その建築家の暮らし方や好み、考え方まで透けて見えます。
そのくらい「自分ならどうか」という自問自答をアイデアやプランに昇華させていくのです。
カヴァードポーチ風の特徴的なテラス。LDKとつながる
天井の梁を見せることもYさんのご要望だったが、勾配のある屋根のため、設計上難しいポイントでもあった
Feature.05
Owner'sVoice「楽しい子育てライフを満喫しています」
ファーストプランのご提案を経て、Yさんからは「いい意味で、まったく予想していなかったプランで驚いた」との声をいただきました。
実は、他に2社ほどとの競合となっていたようなのですが、「ロケーションを活かす」「水まわりは1階」という時点で、2階LDKの案を提案されていたようで、1階のテラス、庭とつながる案が、逆に新鮮だったそうです。
「赤松先生の提案を見た時に、『この土地のことをとてもよく理解したうえで提案してくれているな』と感じました。
私から事前にコスモ建設さんに伝えていた要望もしっかりと反映されていて、建築家との家づくりに抱いていた若干の不安は全く無くなりましたね」とYさんは振り返ります。
Yさんからはプランへの修正もほとんどなく、大変スムーズにやり取りは進みました。
「完成した住まいは、どこにも不満が無い、想像以上に快適です。
子どものために始めた家づくり。
家の中を行き止まりなくグルグル走り回ったり、ハンモックや庭で遊んでいたり…。そんな様子を日々眺めながら、楽しい子育てライフを満喫しています」と奥様。
嬉しそうにお話しされるご夫婦の姿が印象的でした。
ハンモックが大好きなお子様。いつもブランコのようにして遊んでいるそう
右から建築家・赤松 純子氏、Yさんご家族、コスモ建設代表・長沼俊一
Profile
建築家- 1970年東京都生まれ
- 1970-74年ザイールのキンシャサにて幼少期を過ごす
- 1996年横浜国立大学院を卒業
- 1994年スペイン・バルセロナにて技術研修
- 1996年伊東豊雄建築設計事務所
- 2001年fantastic design 一級建築士事務所 設立
住宅の主役は、住まう人。建築家は、歌舞伎でいう黒衣だと思います。そして時に、カウンセラーでもあり、マラソンの伴走者のようでもあり。たくさんの住まう人と出会えることを、たくさんの空間を生み出すことを、楽しみにしています。