ARCHITECT COLUMN

埼玉県行田市M邸

*

土地の価値を見出しながら、
お気に入りのモノやコトを
設計に落とし込む。

  • 設計 森田淳平建築設計事務所
  • 施工 コスモ建設株式会社
  • 所在地 埼玉県行田市
  • 敷地面積 406.64㎡(123.00坪)
  • 延床面積 96.05㎡(29.05坪)
  • C値 0.2
  • UA値 0.39
※インタビュー協力 / 一級建築士
森田淳平 MORITA JUNPEI
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正面から見ると、かなり大きく見える平屋の住まい。
しかし実際の延床面積は約29坪に抑えられている。
空間を市松模様にレイアウトするという発想で、実際の面積以上にボリューム感のある上質な佇まいを演出している。
コーヒーの香りが広がる室内に入ると、M様の趣味であるフィギュアが展示されたディスプレイ棚がお出迎え。
そんな、ご夫妻の趣味が反映された住まいを設計した、森田淳平氏にお話を伺った。

Feature.01

Feature.01

Hearing
Hearing

施主の暮らしや大切にしているコトを知る。
例えば、フィギュアやコーヒーなど「らしさ」(個性)をプランに。

今回の家づくりの取り組みにあたり、当時M様ご夫妻が居住されていたお宅を訪れました。
そこでは、多彩な趣味をお持ちのご夫妻が収集されたフィギュアやポスターが、所狭しと配置されている光景が印象深かったです。
こうした個性豊かな趣味を存分に表現できる住まいが、私たちの計画の中心テーマとなりました。
さらに、M様が大好きなコーヒーショップの雰囲気を取り入れることも、もう一つの重要なテーマとしました。
木の温かみや構造物の存在感に加え、インダストリアルな黒やグレーを採用することで、その雰囲気を再現しました。
お施主様が心から大切にされていることに真摯に向き合い、それを丹念にプランに落とし込んでいくプロセスこそが、私たち建築家による家づくりの真髄であると考えます。

Hearing

ダークグレーのキッチン設備やテーブルセットでコーディネート

Hearing

黒のダクトレールが映える、ギャラリーのような住空間

Feature.02

Feature.02

Location
Location

明確な役割を持った空間を分けることで、
効率の良い市松模様のレイアウトに。

当初M様のお考えは通常の2階建てでしたが、この400㎡を超える敷地を見た時にご夫妻の憧れの暮らしを踏まえて、平屋のプランをおススメしました。
敷地は、南側に比較的交通量の多い道路があり、その道路を挟んだ先は眺望が開けていました。
配置計画においては採光条件が良い南側道路との関係やカーポート(2台分)の設置場所をどうするか、計画の規模に対して充分に余裕のある敷地に対し、残ってしまう余白(スペース)にどのような価値を与えられるかがポイントになりました。
そこで提案したのが、単に1つにまとめるのではなく、あえてパブリックゾーンとプライベートゾーンの2つに分けることで、諸条件をクリアしつつ、縁起の良いとされる市松模様のレイアウトに仕上げました。
一方をギャラリーを兼ねるカフェのようなLDKに、もう一方を寝室や書斎、水まわりのあるプライベートな空間にしました。
そして、市松模様にしたことによって生まれたスペースの南側をバーベキューコーナーのある庭に、北側にカーポートとアプローチを効率よく設けるプランを計画しました。

平面図で見ると、市松模様のレイアウトがわかりやすい

ギャラリーを兼ねるLDKとプライベートな空間でゾーニングされている

Feature.03

Feature.03

Planning
Planning

土地の特性を最大限に活用する提案。
スペースにどのような価値を付加できるかがポイント。

建築家には、予算やその他の条件を考慮しながらも、土地の特性を最大限に活用する提案力が求められます。
単にお施主様の要望に沿った設計を行うだけでは理想的な住まいはつくれません。
「要望通りに計画し、土地が余りました、足りませんでした」という状況はあってはなりません。
建築家の役割は、そのスペースにどのような価値を付加できるかを見出すことにあります。
M様邸の場合、LDKは車通りの多い南側に向けて大きな窓がありますが、間にハイウォールで囲まれたバーベキューコーナーのある庭を設けているため、ここが干渉地となり、道路側から住まいの中まで視線は届きません。
プライバシーを守りつつ、開放感もしっかり演出しています。
M様の住まいは、カーテンを使用しなくても快適に過ごせるように計画されています。

Planning

屋外からの視線が気にならないように、庭とのつながりを検討

Planning

夜になると板張りの外壁がリゾートライクな雰囲気を生む

Feature.04

Feature.04

Favorite Designs
Favorite Designs

ギャラリーウォールにディスプレイ棚、
コーヒーアイテム用の収納棚など、こだわりの造作を随所に。

私が提案で心がけている点はいくつかありますが、その一つがむやみに窓(開口部)を設けないことです。
特に今回のプロジェクトでは、絵画やポスターを展示する「ギャラリーウォール」を設けることが重要なポイントでした。
窓の配置や大きさを慎重に検討することで、壁面の利用効率を最大限に引き出し、美しい展示空間を実現しました。
また、心地よく暮らすための収納計画も大変重要です。
M様ご夫妻が所有されているコーヒー用品やフィギュア、多数の蔵書などを考慮し、将来的な収納ニーズにも対応する「丁度よい収納」を設計しました。
例えば、対面キッチンの背面の壁には、キッチン収納とフラットな高さでつながるカウンター収納を設置。
さらに、玄関とリビングをセパレートする間仕切りとして機能するディスプレイ棚を、両側からアクセス可能な形で配置しています。
書斎には充実した本棚を設け、M様からは「持っているマンガや本が、すべてスッキリと収まった」と喜んでいただけました。
このように、収納スペースの設計にも細部まで配慮し、快適な生活環境を計画しています。

Favorite Designs

玄関に設けたディスプレイ棚。お気に入りのフィギュアが出迎える

Favorite Designs

コーヒー用品をキレイに収める棚。キッチンとフラットにつながる

Favorite Designs

テレワークや趣味を楽しむ書斎。たくさんの蔵書がスッキリと収まる

Feature.05

Feature.05

Housing Performance
Housing Performance

高い気密・断熱性能があるからこそ
暮らしやすさを重視したオープンな設計が形にできる。

今回の提案に限らず、私のアプローチでは、できる限り無駄な間仕切りや単なる廊下を設けないようにしています。
特に廊下は、必ず収納スペースなど併用されるように提案しています。
このような工夫によって、限られた面積でも空間を効率よく使った、開放感あふれる住まいが生まれます。
ただし、夏の暑さ・冬の寒さなど温熱環境に不安があると、オープンな設計は難しくなります。
しかし、コスモ建設さんが提供する高い住宅性能により、安心してプランづくりに集中できます。
高い気密・断熱性能により、オープンな間取りでも快適な住環境を確保できます。
年中安定した心地よい住空間に、コーヒーが香る平屋。M様ご夫妻らしさの、唯一無二の住まいに仕上がり、私も嬉しく思います。

Housing Performance

キッチンからパントリーを抜けて玄関までつながる、回遊動線に

Housing Performance

主寝室への廊下を兼ねる、ウォークインクローゼット

Profile

* 建築家
Profile
一級建築士 森田淳平 MORITA JUNPEI
  • 1974年生まれ
  • 1998年/東京理科大学理工学部建築学科卒業
  • 2001年/早稲田大学大学院理工学研究科建設工学専攻建築学専門分野卒業
  • 2001年~2003年/千葉学建築計画事務所
  • 2003年~2004年/シーラカンスアンドアソシエイツ
  • 2005年~2006年/株式会社日建設計
  • 現/森田淳平建築設計事務所主宰