ARCHITECT COLUMN

埼玉県桶川市M邸

*

お客様の「最善」から導き出した、
周辺環境や趣味を活かした家づくり。

  • 設計 深澤明
  • 施工 コスモ建設株式会社
  • 所在地 埼玉県桶川市
  • 敷地面積 500.00㎡(151.2坪)
  • 延床面積 132.90㎡(40.2坪)
  • C値 0.4
  • UA値 0.54
※インタビュー協力 / 建築家
深澤 明 FUKASAWA AKIRA
img01
img02
img03
img04
img05
img06
img07
prev
next

ふと、足を止めて見てしまう、佇まいの良い住まいがある。
ゆったりとした敷地に建つMさんの住まいだ。
建築家・深澤明氏とのコラボにより、周辺の自然環境やお客様の趣味をとことん反映して仕上げた会心の建築である。
この家づくりを通じて見えてくる、深澤明氏の建築作法とも言うべき、完成までの道筋について語っていただいた。

Feature.01

Feature.01

Location
Location

土地に立ち、土地を知るロケーションの魅力を活かす

緩やかな風が吹き抜ける、ゆったりとした敷地。
南側には、美しい緑が一面に広がっていました。
この絶好のロケーションは、まさに家づくりにおいて理想的な環境で、Mさんからも「このロケーションを家づくりに活かしたい!」という強い要望がありました。
私たちの設計の方向性は定まり、「周辺環境を活かした計画」が提案に向けた大切な軸の一つとなりました。
現地調査で実際に敷地に立つことで、周囲の環境をより深く理解することができます。
目の前に広がる眺望、刻々と変わる光の差し方、風がどの方向から吹くのか、卓越風の通り道などの情報を掴むこと─。
これらの情報は、私たちが立体的なイメージを描くための重要な材料であり、設計へと具現化する道筋を示してくれます。

Location

南側に、緑に囲まれたゆったりとした敷地を持つMさんの住まい

Location

猫のためのキャットウォークもデザイン。窓辺は猫の特等席でもある

Feature.02

Feature.02

Communication
Planning

最初のヒアリングが、すべて楽しい雰囲気で話を引き出す

最初のヒアリングは2~3時間ほど頂戴して話を伺っていきます。
家づくりのプランニングでは、ここが一番大切。
「家づくりのすべて」と言っても過言ではありません。
Mさんが現状どのような暮らしをしていて、今後どうしていきたいのか。
日常の些細なことから始まり、自分たちだけにある暮らしのルールなんかも聞きます。
実は、こうした話が一番盛り上がります。
たとえば、「食事中にTVを見るのか見ないのか」。
これは、良い悪いの議論ではなく、ダイニングとリビングの位置関係が大きく影響する情報なんです。
何気ない会話の中に、こうした重要なポイントがたくさんあります。
だからと言って、こちらも力みすぎてはいけない。
お客様が緊張してしまっては、大切な本音を引き出すことはできませんから。
楽しくリラックスしていただくことに重点を置きつつ、ヒアリングを行います。

Passive Designs

家づくりの思い出話が盛り上がる。右が建築家の深澤明氏

Passive Designs

何気ない暮らしのポイントをプランにちりばめている

Feature.03

Feature.03

Planning
Hearing

要望を「魅力」に変換しプランに落とし込んでいく

Mさんのヒアリングを経て「ロケーション(環境)を活かす」というご要望の他、ガレージハウス、広い土間、吹抜け、書斎…など、本当に盛りだくさんのご要望をいただきました。
現地調査による情報や、お客様のご予算など大きな前提条件もしっかり抑えつつ、そこから導き出される空間(広さ)の中に、いかにしてご要望を落とし込んでいくか。 Mさん邸の場合は、玄関に入ると広い土間が広がり、その先に吹き抜け、目の前に南側の庭の緑が目に飛び込んでくるように設計しました。さらに、右手にはガレージ内の愛車の様子も見ることができます。玄関を開けた瞬間に、この家の魅力をすべて体感できる仕掛けになっています。 浴室は見晴らしの良い2階の南側にあり、入浴しながら、緑を鑑賞できます。通常であれば、浴室の場所は1階北側というのが相場ですが、ロケーションの可能性を最大限引き出すことを模索した結果でした。

Passive Designs

奥行きがあり、視線が抜ける土間玄関。右は愛車が見えるガレージ

Passive Designs

浴槽につかりながら、空や緑を眺められる2階の浴室

Feature.04

Feature.04

Best Form
Effective use

アイデアの無駄を削ぎ落し
何が「最善」かを見つけ出す

ファーストプランに辿り着くまでに、たくさんのスタディを重ねます。
「スタディ」とは、アイデアを出してはそぎ落としていく作業の連続で、まさに自問自答と状況整理を繰り返しながら「最善」を見つけだすために行うべきことです。
思い付きだけに頼ったアイデアや、見た目のデザイン性だけでは、本当にお客様にとって暮らしやすい住まいとはなりません。
「デザイン重視」か「暮らしやすさ」かという、単純な2択ではなく、「何が最善か」という問いに対して掘り下げた回答が求められるのです。
たとえば玄関に入った瞬間に広がる空間の提案ですが、当初は、玄関からそのまま土間続きで南側の庭にまで出られてしまうような、今よりもオープンなデザインも考えていました。
しかし、「お子様が幼いうちは、アクティブで楽しい住まいかもしれないが、5年後、10年後も本当に快適か?」と考え、現在のスタイルにまとめました。
庭越しに緑が広がり、趣味のロードバイクの整備もできるが、玄関からはリビングやキッチンが丸見えにはならず、ほど良い奥行きが感じられ庭へと視線が抜ける。これが、今回の「最善」と考えました。

Effective use

ファーストプランまでにさまざまなスタディを重ねる

Effective use

プランと併せて、外観プロポーションも試行錯誤

Feature.05

Feature.05

Owner'sVoice
Owner'sVoice

「すべてがちょうどよい、私たちの理想の住まいです」

Mさんへのファーストプランのご提案では、「私たちの想像をはるかに超えたプランで驚いた」との声をいただきました。
一方で広さ(床面積)は、当初考えていたより、コンパクトな空間に収まったと、Mさんは振り返ります。
「深澤先生の提案は、他社の提案よりコンパクトでしたが、無駄がなく、私たちの要望が凝縮されていました。
初めて見たプランでしたが、すんなり『私たちの家だね』と納得できたんです。
実際暮らしてみて、すべてがちょうどよい。
書斎で机に向かうと大好きな愛車が見えて、ふと振り返ると、今度は緑が見える。
まったく狭さを感じないつくりで、すべて計算された私たちだけの理想の住まいです」(Mさん)
Mさんご夫婦にはご納得いただき、ファーストプランのまま、ほぼ変わらず設計は固まりました。
大変うれしいお言葉もいただくことができ、私にとっても刺激的で、今後の糧となる家づくりでした。ありがとうございました。

Owner'sVoice

多趣味のMさんは、書斎で愛車を眺めながら、音楽を愉しむことも

Owner'sVoice

爽やかな光に包まれながら起床することができる主寝室

Profile

* 建築家
Profile
一級建築士 深澤 明 FUKASAWA AKIRA
  • 1972年栃木県生まれ
  • 野沢正光建築工房入所
  • 深澤設計一級建築士事務所 開設

「住まいは生活を支える大切な器です。同じような規模、材料、予算であっても、ちょっとした工夫や意思によって、より良い住まいが得られる事は多々あります。 住まい方は生き方にも通じます。その楽しいプロジェクトに参加させていただき、共に考えたり感じたり楽しんだりすることができれば幸いです。」